「生物のからだはほんとに上手い具合にできているなぁ」なんて声をよく聞きます。
でも、必ずしもそうでもありません。なんでこんな下手な設計になっているのかと思うことがあります。
養老孟司先生が何かの本に「空気の通り道と食べ物の通り道が同じだからいけない!」
・・・という趣旨のことを書いておられました。
「だから、餅をのどに詰めて死ぬ人が出るんだ」と。まったく、その通りです。
植物の気孔についても同じようなことを思います。
光合成をするときに、気孔を開けて材料の二酸化炭素を取り入れなければなりません。
ところが、困ったことに、気孔を開けると貴重な水分が逃げていってしまいます。
この難題を上手く解決した植物がいます。
近くの川の護岸コンクリートの上に黄色い花を咲かせているツルマンネングサ(蔓万年草)です。
中国原産のベンケイソウ科の多肉植物で、古い時代に日本に帰化したと考えられています。
花をつけていない茎は地面を這い、コンクリートの上でも石垣の上でも平気で伸びていきます。
気温差は激しいし、すぐに乾燥するし、ふつうの植物は生きられない場所です。
なぜ、こんな過酷な環境で生きられるのかというと、この植物がCAM植物だからです。
CAMとは、Crassulacean Acid Metabolism(ベンケイソウ型有機酸代謝)の略です。
ベンケイソウ科の植物は、乾燥したときには気孔を閉じてしまいます。
夜になると気孔を開けて二酸化炭素を取り込み、これをリンゴ酸にして液胞に貯えます。
そして、昼間、太陽の光を受けると気孔を閉じ、貯えておいた二酸化炭素で光合成をします。
乾燥した環境に適応するための上手い戦略です。
はじめはベンケイソウ科の植物だけの現象として発見されたので、CAMと呼ばれました。
しかし、その後、サボテンやランの仲間でも同じことが行われていることがわかりました。
これらの植物をまとめてCAM植物といいます。
乾燥していないときは、ふつうの植物と同じように昼間、気孔を開きます。
乾燥するとCAM植物に変身して、夜に気孔を開くようになります。
さらにもっと乾燥すると、昼も夜もずっと気孔を閉じたままにします。
そして、細胞内の呼吸で生じた二酸化炭素をそのまま光合成に利用するのです。
何という逞しさ!
黒い葯は花粉を放出する前の状態。花粉を放出するようになると、葯が赤くなります。
花粉をつくっても、実は日本でツルマンネンソウが結実することはほとんどないそうです。
種子をつくらないでどうやって殖えるのかというと、茎や葉っぱがちぎれて殖えていきます。
強風とか洪水とかでちぎれると、ちぎれた部分からまた新しいからだができてきます。
ホントに逞しい植物です。
さて、きょうの問題です。京都大学の理系の二次試験の問題です。
問 サボテン類のような多肉植物は、ふつうの陸上植物と異なり、大気中から取り込まれた二酸化炭素はリンゴ酸の形で固定される。そして、この有機酸からつくられる二酸化炭素が光合成に使われる。有機酸がつくられるときに取り込まれるガスの量を測定したところ、気孔から取り込まれた二酸化炭素の量よりも有機酸として固定された二酸化炭素の量のほうが多いことがわかった。その理由を述べよ。
きのうの問題の答え・・・ウ
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