「高校生のための生き物学習」も3週目に入ります。
兵庫県ではまだまだ休校状態が続いていますので、もう少し続けます。
毎年5月の連休の頃に、養父市大屋町加保坂のミズバショウを見に行っていました。
しかし、今年はコロナ禍でミズバショウ公園も閉鎖されてしまいました。
したがって、きょうの写真は昨年の5月初旬に撮影したものです。
長い年月の間に、その土地の植生や相観(植物群落の外観)は、徐々に変化していきます。
例えば、いまは草原であっても、いずれ森林になっていきます。これを遷移といいます。
遷移には、火山から流出した溶岩上のようなまったくの無植生から始まる一次遷移と、山火事あとのような土がありその中に種子がある状態から始まる二次遷移があります。
また、遷移は陸上から始まる乾性遷移と、湖沼から始まる湿性遷移に分けられます。
湿性遷移では、「貧栄養湖→富栄養湖→湿原→草原→森林」と変化してきます。
・・・と、教科書には書いてあります。
ところが、加保坂のミズバショウは1万年以上前の氷河期から毎年咲き続けているというのです。
遷移が進行せず、湿原の状態がずっと維持されているのです。
教科書に書かれていることは、ここではまったく当てはまりません。
ミズバショウは、シベリア東部、サハリン、北海道など、寒冷地の湿原の植物です。
本州では、中部地方以北の日本海側の雪の多いところに分布しています。
ところが、ポツンと離れて、兵庫県養父市大屋町の加保坂にミズバショウが隔離分布しているのです。
ここが発見されるまでは、岐阜県郡上市のひるがの高原が南限、福井県勝山市の取立平が西限でした。
ここが発見されて、ミズバショウ自生地の南限・西限が一気に約200kmも移動したのです。
尾瀬のオバケミズバショウのように大きくはありません。自生地の面積も広くはありません。
しかし、学術的に大変貴重なものです。
なぜ、湿原のままで遷移が進行しないのでしょうか?
それは、泥炭が湿原を形成しているからです。
植物の遺体はふつうなら分解者(菌類や細菌類)によって分解されてしまいます。
ところが、水に浸されていることと気温・水温が低いために、分解者の活動が抑制され、植物の遺体が泥炭として残ってしまうのです。
有機物の分解が進まず、ここでは貧栄養的な環境がずっと維持されてきました。
近年、温暖化の影響か、ミズバショウの開花が早くなっているように思います。
温暖化で有機物の分解が進むと、やがてススキなどの生える草原に変わっていくでしょう。
そして、わずか数十年で森林になっていきます。
なんとしても、1万年以上保たれてきたこの湿原を守っていきたいものです。
さて、きょうの問題です。ごく一般的な植生の遷移に関する入試問題です。
問 植生の遷移に関する説明として最も適当なものを、次のア~エから1つ選びなさい。
ア 降水量が多い場所で起こる植生の遷移を湿性遷移という。
イ 日本国内で見られる植生の遷移はすべて一次遷移である。
ウ 二次遷移では、地衣類が先駆植物となる。
エ 一次遷移では、極相に至るまでに数百年かかることがある。
きのうの問題の答え・・・津軽海峡
(Aグループは北海道の動物、Bグループは本州の動物です。よって、境界線は津軽海峡にあり、この境界線をブラキストン線といいます。昔は暗記させられた用語ですが、いまはまったく教科書に登場しません^^)
↓1日1回、ポチッとお願いします。 大変励みになっています。
植物・花ランキングこのブログの写真の無断使用をお断りします。
- 関連記事
-
スポンサーサイト