高校のグランドに誰一人いないというのは本当に寂しいことです。
一日も早く、ここに高校生の溌剌とした姿が戻り、元気な声が響き渡って欲しいものです。
静かなグランドの周辺に、ポツポツと植物が生えていて、いま小さな黄色い花を咲かせています。
ウマゴヤシ(馬肥)というヨーロッパ原産のマメ科植物です。
その名の通り、高タンパクで栄養価の高い牧草として、江戸時代に日本に入ってきました。
植物は光合成をして、二酸化炭素と水を原料に炭水化物(炭素、水素、酸素からなる)を合成します。
そして、ふつう土中の硝酸イオン(窒素を含む)を取り込んで、タンパク質を合成します。
大気中の約8割が窒素ガスなのに、残念ながらこれを利用することができません。
必ず土中の窒素分を吸収しなければならないのです。
したがって、グランドのような窒素分の少ない、いわゆるやせた土地では植物は育ちにくいのです。
では、なぜ、ウマゴヤシはこんなところで生きていけるのでしょうか?
それは、ウマゴヤシが根粒菌という細菌を根に棲まわせているからです。
根粒菌はニトロゲナーゼという酵素をもっていて、これで大気中の窒素をアンモニアにすることができます。
このはたらきを窒素固定といいます。一部の細菌類にしかできないはたらきです。
ウマゴヤシは、根粒菌から窒素分をもらうので、やせた土地でも生きていけるというわけです。
光合成ができない根粒菌は、ウマゴヤシから炭水化物をもらいます。
このウマゴヤシと根粒菌の関係も、きのう紹介した相利共生の代表例です。
グランドに生えていたウマゴヤシを引き抜いて、土を洗い流してみました。それが↑これ。
根のあちこちに少し赤みを帯びたコブのような粒々がいっぱいあります。
これが根粒です。この中に根粒菌が棲んでいます。
なぜ赤いかというと、ウマゴヤシがレグヘモグロビンという色素をつくっているからです。
この色素は、我々の赤血球に含まれるヘモグロビンとよく似た物質で、酸素と結合します。
というのは、窒素固定にはたらくニトロゲナーゼは酸素濃度が高いとはたらかないのです。
ところが、窒素固定にはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを供給する物質が必要で,これは酸素呼吸によってつくられるので、最低限の酸素が必要となります。
酸素が多くてもダメだし、なくてもダメなのです。
そこで、レグヘモグロビンが根粒内の酸素濃度を低く抑え、ATPも合成できるし、ニトロゲナーゼもはたらくという、根粒菌の窒素固定がしやすい絶妙な状態を保っているのです。
なんとまぁ、血の通った心遣いでしょう^^
根粒菌は根粒の中に入らないと酸素濃度が高くて窒素固定ができません。
お互いに相手といっしょに暮らすほうが得なのです。
根粒菌と共生しているのはウマゴヤシだけではありません。
レンゲソウ、シロツメクサ、カラスノエンドウなど、マメ科植物はみんな根粒菌と共生しています。
そして、この根粒菌にもいろんな種類があって、マメ科植物だったら何でもいいわけではないのです。
それぞれ相性のいい組み合わせがあって、互いに相手を選んで共生しているようです。
いずれにしても、マメ科植物は根に窒素肥料の工場をもっているようなものなのです。
田んぼにレンゲソウを生育させることは、窒素肥料の節約につながるのです。
では、問題です。実際の大学入試で出題された問題です。
問 根粒菌と共生している植物が他の植物より有利となる場所として最も適当なものを、次のア~エから1つ選びなさい。
ア 年間の降水量が極端に少ない砂漠のような場所
イ 火山の噴火によって溶岩が流出してから10年程度経過した場所
ウ 寒冷期が長く、土壌が凍結する場所
エ 周囲にさえぎるものがなく、風が強い場所
きのうの問題の答え・・・イ(被食者が増えると捕食者が増えます。そして、捕食者が増えると、被食者が減ります。無害なフシダニの数が増えると、これを食べるカブリダニの数も増え、これが有害なフシダニを食べるので、虫こぶは減ります)
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