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相利共生

樹木、特にその葉っぱは植物食の動物たちにとって、大事な栄養源です。
シカ、チョウやガの幼虫だけでなく、たくさんの小さなダニたちも葉っぱを食べて生きています。
食うほうを捕食者、食われるほうを被食者といいます。
葉っぱの上には、葉っぱを食べるダニだけでなく、そのダニを食べるダニがいます。
同じダニどうしにも被食者と捕食者の関係があるのです。
一般に、捕食者のほうが被食者よりも大きなからだをしています。

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さて、クスノキの葉っぱの葉脈をみると、中央の主脈と左右に伸びる太い2本の側脈が目立ちます。
このような葉脈を「三行脈」と呼んでいます。
三行脈の枝分かれの部分に注目してください。そこに2つ、小さなこぶのようなものが見えます。
その内部は部屋になっていて「ダニ室」と呼ばれてます。
ここに顕微鏡的な大きさのダニが棲んでいます。

IMG_8277.jpg

ダニ室には入り口の大きなものと小さなものの2種類があります。
大きな入り口のダニ室には、ナガヒシダニという捕食性のダニが棲んでいます。
このダニは、クスノキの葉っぱを食べるダニの卵が大好物で、結果的にクスノキを守っています。
小さな入り口のダニ室のほうには、もっと小さなフシダニの一種が棲んでいます。
このダニは、ダニ室の中でクスノキから栄養をもらっていますが、それ以上の害は与えません。
クスノキの葉の上には、他に何種類もダニがいます。
けっこう多いのは、クスノキを食害し、虫こぶをつくってしまう有害なダニです。
数は少ないですが、肉眼で何とか見えるカブリダニというちょっと大きい捕食性のダニもいます。

ダニ室に棲む無害なフシダニが繁殖して、ダニ室からあふれ出すと、カブリダニの餌になります。
カブリダニは、無害なフシダニも有害なダニも食べるのです。
つまり、ナガヒシダニやカブリダニの存在は、クスノキにとってはありがたい存在です。
クスノキは、ナガヒシダニのために棲む部屋を与え、カブリダニのために餌となる無害なフシダニを養殖していることになります。
クスノキと捕食性のダニはお互いに利益をもたらし合っています。
このように2種類以上の生物が相手の存在によってともに利益を得る関係を相利共生といいます。
実際、人為的にダニ室の入り口をふさいでダニが出入りできないようにすると、有害なダニが繁殖してしまい、葉っぱが虫こぶだらけになるそうです。

IMG_8294.jpg

ダニ室は、ダニがつくるのではありません。クスノキ自身がつくるのです。
だから、↑この若い葉っぱにも最初からダニ室が用意されています。

クスノキとダニとの関係については、現在もさまざまな研究が行われています。
ここに書いたことが覆る可能性もありますので、ご了解ください。

では、問題です。
 次のア~エの文のうち、正しいものどれですか。正しいものを1つ選びなさい。
 ア 無害なフシダニの数が増えると、カブリダニの数が増え、虫こぶも増える。
 イ 無害なフシダニの数が増えると、カブリダニの数が増え、虫こぶが減る。
 ウ 無害なフシダニの数が増えると、カブリダニの数が減り、虫こぶが増える。
 エ 無害なフシダニの数が増えると、カブリダニの数が減り、虫こぶも減る。

きのうの問題の答え(解答例です)・・・樹木の葉の寿命は、葉の形成や維持にかかるコスト当たりの生産量が最大になるように決まると考えられます。葉が古くなると不要物も蓄積し、光合成の効率が落ちるので、いずれ新しい葉と入れ替わるのですが、新しい葉をつくるとなるとコストがかかります。そこで、低緯度ではたっぷり光合成ができるため少々効率が低下しても長く葉をつけておきます。一方、高緯度では、光合成が十分でないため元がとれるようになるまで葉の寿命を延ばして、生産量をかせごうというわけです。

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コメント

Re: No title

>みみさん
おはようございます。いつもありがとうございます。
ほとんど目に見えない世界での食う食われるの関係、それを利用するクスノキ、面白いです。

No title

こんばんは~
生命の営みってすごいですね
まさかクスノキさんがダニを飼っているとは思いもよらなかったです~(#^.^#)

答えは イ にします~(^^ゞ 

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丹馬

Author:丹馬
落語と授業の合い間に生き物を中心とした写真を撮っています。
兵庫県の北部・中部がおもなフィールドです。

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