休眠打破
- 2020/05/31
- 21:00

長ぁ~い休校措置がやっと終わり、明日から学校再開です。まだ分散登校でいつも通りではありませんが、日常が取り戻せることは嬉しいことです。そんなわけで、1か月間続けてきた「高校生のための生き物学習」もきょうでひとまず終わりにします。養父市の妙見山・名草神社の下にクリンソウの花がたくさん咲いています。園芸品種ではありません。山間部の湿潤な場所に自生しています。兵庫県では、宍粟市のちくさ高原、丹波篠山市の...
クチクラ層
- 2020/05/30
- 21:00

ラテン語でクチクラ(Cuticula)は英語でキューテクル(Cuticle)です。植物の葉っぱの表面を覆うのも、昆虫の外骨格も、ヒトの髪の毛の表面もクチクラといいます。クチクラ層は、生物のからだの表面を覆い、水分の蒸発を防いだり、内部を保護したりしています。このクチクラ層が特によく発達しているのが、海浜植物です。但馬の海岸では、いまハマヒルガオが一面に咲いています。熱くて乾燥していて、栄養分が少なく、潮風に吹か...
渡り
- 2020/05/29
- 21:00

生物が周期的に規則正しく生息地を移動する現象を渡りといいます。クジラやサケなども移動しますが、水中の場合は回遊といいます。おもに空中が渡りです。渡りというと、ツバメ、ハクチョウなどの鳥を連想してしまいがちですが、鳥だけではありません。渡りをする昆虫がいます。アサギマダラ(浅葱斑)という鮮やかな蝶です。アサギマダラを見に竹野の海岸に行ってきました。竹野浜に、いまスナビキソウの花が咲いています。中心が...
特定外来生物
- 2020/05/28
- 21:00

人間の活動によって、本来生育していない地域に外から運ばれて定着した生物を外来種といいます。道端には外来種がいっぱいあります。シロツメクサもヒメジョオンも外来種です。そんな外来種の中で、特に生態系に被害を与える懸念のある生物を環境省がリストアップしました。それが「生態系被害防止外来種リスト」で、全部で429種類の動植物の名があがっています。その中で水生植物は37種類。そのうちの1つが↓これです。キショウブ...
CAM植物
- 2020/05/27
- 21:00

「生物のからだはほんとに上手い具合にできているなぁ」なんて声をよく聞きます。でも、必ずしもそうでもありません。なんでこんな下手な設計になっているのかと思うことがあります。養老孟司先生が何かの本に「空気の通り道と食べ物の通り道が同じだからいけない!」・・・という趣旨のことを書いておられました。「だから、餅をのどに詰めて死ぬ人が出るんだ」と。まったく、その通りです。植物の気孔についても同じようなことを思...
生態系サービス
- 2020/05/26
- 21:00

「3密」を避け、但馬の棚田巡りをしてきました。但馬には「日本の棚田百選」に選ばれている棚田が2つあります。香美町村岡区和佐父の「西ヶ岡の棚田」と、香美町小代区貫田の「うへ山の棚田」です。百選の中に入ってはいませんが、養父市の鉢伏山中腹の「別宮の棚田」も好きな棚田です。別宮の棚田 畦の曲線が美しい棚田です。手つかずの自然だけが生態系ではありません。水田も立派な生態系の1つです。最近、生態系サービスと...
顕性・潜性
- 2020/05/25
- 21:00

Y高校の駐車場横にニワゼキショウ(庭石菖)が花盛りです。植えたわけではありません。勝手に生えてきてお花畑をつくっています。北米原産の帰化植物です。日当たりのいい道端でもよく見かけます。赤紫色の花を咲かせる個体と白色の花を咲かせる個体がほぼ半々に混じっています。花びら6枚で、花の直径は5~6mm。小さくて可憐な花です。花の中心部が黄色で、そのまわりが赤紫色。濃い色のスジが入っています。ここまでは共通で...
観察材料・紫露草
- 2020/05/24
- 21:00

ムラサキツユクサ(紫露草)は北米原産の帰化植物です。庭に植えたものが道端や空き地で野生化していますが、これがいい観察材料になります。葉っぱの気孔が大きいので、中学校理科では気孔の観察材料の定番です。気孔はふつうは葉っぱの裏側に多いのですが、ムラサキツユクサでは表裏両面にたくさんあります。雌しべのまわりに雄しべが6本。この雄しべに細かい毛がいっぱい生えています。この毛は、大きな細胞が縦に1列に並んで...
ミュラー型擬態
- 2020/05/23
- 21:00

ジャガイモの葉っぱの上で、ニジュウヤホシテントウを見つけました。頭に近い方から片側の前翅に、3・4・3・3・1と計14個の黒斑が並びます。両方で28個あるので、ニジュウヤホシテントウ(二十八星天道)。テントウムシの仲間の多くは、幼虫のときも成虫になってもアブラムシを好物としています。植物の汁を吸うアブラムシを退治してくれるので、農家や園芸家にとってテントウムシは益虫です。ところが、このニジュウヤホシテ...
貯食行動
- 2020/05/22
- 21:00

蜂蜜のことはよく知らないのですが、何の花の蜂蜜が人気なのでしょう。レンゲソウ、アカシア、トチノキ、ミカン、・・・それぞれ味が違います。人気の蜂蜜を3種類セットにして「三蜜」として発売したらどうでしょう。売れるかも^^このエゴノキの花の蜜も美味しそうです。我が家の庭のエゴノキの花が満開です。甘いいい香りがあたりに漂っています。真下を向いて垂れ下がった花に、朝早くからコマルハナバチやミツバチがやって来ます...
観察材料・雪の下
- 2020/05/21
- 21:00

いま、ユキノシタ(雪の下)の花が満開です。ユキノシタは原形質分離の観察材料としてよく利用します。山の沢沿いに生えていることが多いのですが、いつでも使えるように我が家の庭に植えています。例年なら5月頃、花の咲いている時期に使うので、授業で花も一緒に紹介できます。ところが、今年はまだ1回も授業ができていません。6月から学校が始まったとしても、ユキノシタの出番は7月頃になるのでしょうか。その頃には、もう...
先駆種
- 2020/05/20
- 21:00

休校状態が続く中、「高校生のための生き物学習」も4週間目に入ります。学習に役立つというだけでなく、できるだけ美しい写真をアップしたいと心掛けています。しかし、きょうの主役はなかなか美しいというような表情を見せてくれません。サクラの木に止まったサトキマダラヒカゲ。…ではなくて、きょうの主役は、幹にへばりついた灰色っぽい緑色のウメノキゴケです。コケという名前がついていますが、コケ植物ではありません。地...
風散布
- 2020/05/19
- 21:00

秋に紅葉が楽しめるイロハモミジですが、この時期も目を楽しませてくれます。新緑の葉っぱの上に赤く見えるのは、・・・・・花ではありません。イロハモミジの果実です。参考までに、↓こちらが花。花も赤いのです。1か月前に撮りました。↑左の写真の中に3つだけ両性花(雌しべと雄しべがそろった花)が見られます。他はすべて雄花。雄花には、右の写真のように雄しべだけが8本あります。イロハモミジには昆虫はやって来ません。風媒...
続・蜜標
- 2020/05/18
- 21:00

きのうのキリの花の蜜標に続いて、きょうはツツジの花の蜜標のお話です。林の縁にモチツツジ(黐躑躅)の花が咲いていました。葉っぱなどを触るとモチモチと粘り気があるのでモチツツジ。日本の固有種です。特に花の柄やガクの部分はとてもネバネバしています。ツツジを食べに来る昆虫から身を守るのに役立っているのでしょう。合弁花ですが、一応花びらは5枚です。上側の花びらに濃い赤紫色の目立つ斑点があります。これがモチツ...
蜜標
- 2020/05/17
- 21:00

淡い紫色のキリ(桐)の花が咲いています。この時期、ノアザミ、フジ、ニワゼキショウ、シランなど、紫色系の花が増えてきました。キリの花は一斉に開花するのではなくて、咲いている花も、これから咲くつぼみもあります。昨年の果実が半開きでまだ残っていますが、内部の種子はすでに風に乗って飛散しています。開いた花にコマルハナバチがやって来ました。花びらは筒状になっていて先は5つに分かれています。下側3つには濃い紫...
他家受粉
- 2020/05/16
- 21:00

道端にノアザミの紅紫色の花が咲いています。アザミの仲間はたくさんありますが、いまごろ咲いているのはノアザミです。植物の中にはエンドウやイネのように自家受粉をするものもあります。自家受粉は高い確率で受粉できますが、近交弱勢を招き、適応性を低下させる危険性があります。そこで、多くの植物は積極的に他家受粉を行い、遺伝子のバリエーションを豊富にしています。そのしくみをノアザミで見ていきます。ノアザミはたく...
里地里山
- 2020/05/15
- 21:00

生物の多様性を維持する上で、里地・里山の重要さが指摘されています。水田やため池、雑木林、原っぱなどは、人々が生活することによって形成され、維持されてきました。そこには里地・里山だからこそ生きる多様な生物たちがいます。例えば、ツバメたち。彼らはヒトと共に生きています。ヒトの近くで巣作り・子育てをすることで、カラスやヘビ、イタチなどの天敵から逃れられるのです。田植え前の田んぼに巣作りのための泥を取りに...
社会性昆虫
- 2020/05/14
- 21:00

ミツバチのように、1つの巣の中に女王蜂や働き蜂のような階層がある昆虫を社会性昆虫といいます。ミツバチが代表格ですが、スズメバチやアリ、シロアリにも見られます。でも、巣のメンバーは家族。女王蜂とその子どもたちです。人間の社会とはちょっと違います。そもそも何らかのルールがあれば社会なのです。モンシロチョウにだって社会はあります。そこで最近は、働き蜂のような「不妊の階層がある」という特徴にスポットを当て...
湿性遷移
- 2020/05/13
- 21:00

「高校生のための生き物学習」も3週目に入ります。兵庫県ではまだまだ休校状態が続いていますので、もう少し続けます。毎年5月の連休の頃に、養父市大屋町加保坂のミズバショウを見に行っていました。しかし、今年はコロナ禍でミズバショウ公園も閉鎖されてしまいました。したがって、きょうの写真は昨年の5月初旬に撮影したものです。長い年月の間に、その土地の植生や相観(植物群落の外観)は、徐々に変化していきます。例え...
地理分布
- 2020/05/12
- 21:00

きのう、ヤマフジを紹介しましたが、フジ(藤)の花もいま盛りです。山にあるからヤマフジというわけではなくて、山にはフジもヤマフジもあります。ヤマフジがあるのは近畿(兵庫県か京都府)以西の中国・四国・九州地方とされています。兵庫県では両方が見られますが、両方が混在することは滅多にありません。まずは、フジとヤマフジの見分け方から紹介します。まず、花のつき方が違います。フジは縦長の▼の形、ヤマフジは短くて■...
虫媒花
- 2020/05/11
- 21:00

植物の花粉の運ばれ方は、中学校理科の学習内容です。高校では、花粉や卵細胞ができるまでの減数分裂と、受精したあとの植物の発生について学習します。でも、いちばん面白いのは、受粉や受精のところなんだけどなぁって、私は思います。そこで、きょうは受粉のお話。花粉の運ばれ方によって、風媒花、水媒花、鳥媒花、コウモリ媒花、カタツムリ媒花などもありますが、いちばん一般的な虫媒花のお話。虫媒花もいろいろです。いま、...
富栄養化
- 2020/05/10
- 21:00

いつもできるだけ美しい写真をアップしようと心がけているのですが、きょうはごめんなさい。川の水が濁っていて、サギやカワウも餌が捕りにくくて困っているようです。でも、きょうは写真の動物ではなく、水中に含まれる物質とその行方について考えたいと思います。受験生にとっては「小論文対策」としても重要なテーマです。基本的な知識を得た上で、自分の意見を持ち、説得力のある文章を書きたいものです。毎年、この時期、田ん...
遺伝的多様性
- 2020/05/09
- 21:00

緩やかな流れの清流に住むニホンカワトンボです。金属光沢の美しいトンボです。県によっては絶滅危惧種に指定されていますが、但馬では特に珍しいトンボではありません。↑この手前の個体が雄で、奥にいるのが雌です。このあたりでは、雄は橙色の翅をもつものが多く、雌は淡い橙色の翅をもつものが多いようです。しかし、雄にも淡い橙色の翅をもつものがいますし、雌雄とも無色透明の翅をもつものもいます。同じニホンカワトンボと...
クローン
- 2020/05/08
- 21:00

近くにシャガ(著莪、射干)の花が一面に咲いているところがあります。国道から少し入ったほとんど人家のないところなのですが、細い道の両側にいっぱい咲いています。シャガは中国原産で、日本にはかなり古い時代に入ってきた史前帰化植物と考えられています。しかも、日本に生えているシャガはすべて3n(三倍体)です。3nでは減数分裂がうまくできないため、種子をつくって増えることができません。すべて株分けで、人の手に...
コケの胞子体
- 2020/05/07
- 21:00

「苔テラリウム」とかいって、ガラス容器の中でコケを育てるのが人気なんだそうです。いわば、卓上のガーデニングですね。中でも人気なのが、↓このコケ。タマゴケといいます。このもふもふ感がいいでしょ。ヒトの染色体数は46本。同じ大きさ同じ形の相同染色体が2本ずつあるので、これを2nと表します。つまり、2n=46です。減数分裂によってできる精子と卵だけは23本、nです。さて、コケ本体の染色体数はnです。タマゴケの場...
共通テスト
- 2020/05/06
- 21:00

「高校生のための生き物学習」、2週間目に入ります。きょうは、一度見たら忘れられない花を紹介します。ハナイカダ(花筏)です。珍しい花だそうですが、我が家の近くの道路脇で見られます。すぐそばを北近畿豊岡自動車道が走っているようなところです。葉っぱの真ん中に花が咲いています。不思議でしょ。雌雄異株で、↑こちらが雌株の雌花です。葉っぱの真ん中にふつう1個の花をつけます。緑色の小さな花びらがふつう4枚、雌し...
硬葉樹林
- 2020/05/05
- 21:00

高校の「生物基礎」で、ナントカ樹林というのが出てきます。熱帯多雨林とか雨緑樹林、夏緑樹林、針葉樹林…など。入試対策として、それぞれの代表的な樹木を、どんな樹木かも知らずにとにかく丸暗記。ちょっと悲しいですね。受験生にとって最もまぎらわしいのが硬葉樹林。きょうはそのお話。硬葉樹林の代表的な樹木を紹介しようとして思い出したのがY高校の体育館脇にあるゲッケイジュ。いまなら花が咲いてる!と思ったのですが、...
窒素固定
- 2020/05/04
- 21:00

高校のグランドに誰一人いないというのは本当に寂しいことです。一日も早く、ここに高校生の溌剌とした姿が戻り、元気な声が響き渡って欲しいものです。静かなグランドの周辺に、ポツポツと植物が生えていて、いま小さな黄色い花を咲かせています。ウマゴヤシ(馬肥)というヨーロッパ原産のマメ科植物です。その名の通り、高タンパクで栄養価の高い牧草として、江戸時代に日本に入ってきました。植物は光合成をして、二酸化炭素と...
相利共生
- 2020/05/03
- 21:00

樹木、特にその葉っぱは植物食の動物たちにとって、大事な栄養源です。シカ、チョウやガの幼虫だけでなく、たくさんの小さなダニたちも葉っぱを食べて生きています。食うほうを捕食者、食われるほうを被食者といいます。葉っぱの上には、葉っぱを食べるダニだけでなく、そのダニを食べるダニがいます。同じダニどうしにも被食者と捕食者の関係があるのです。一般に、捕食者のほうが被食者よりも大きなからだをしています。さて、ク...
常緑樹と落葉樹
- 2020/05/02
- 21:00

「高校生のための生き物学習」の4回目です。高校の「生物」や「生物基礎」の学習に役立つお話を、私の撮った写真とともに紹介していきます。兵庫県の平地は南部も北部も照葉樹林帯に属します。照葉樹林とは、温帯の常緑広葉樹を中心とした林のことです。でも、山を見ると、クヌギやコナラなどの落葉広葉樹やスギやヒノキの針葉樹がいっぱいです。それは、これらの林がすべて人の手が加わった雑木林や植林だからです。本来の照葉樹...
種間関係
- 2020/05/01
- 21:00

きょうも「高校生のための生き物学習」です。現役の高校生だけでなく、昔の高校生もおつきあいください^^生き物は1つの種だけで単独で生きていることはありません。異なる種の生物と関係を持ちながら生きています。これを種間関係といいます。食う食われるの関係、同じ食物をめぐる競争の関係などもそうです。そんな中から、植物の分泌する蜜とこれを吸う昆虫の関係を紹介します。「3密」ではなく「吸蜜(きゅうみつ)」のお話^^...